画家あれこれ7 new 2014.8.30
フィリッポ・リッピ(1406-1469)
「聖母子と二天使」 93cm×62cm /ポプラ(板)テンペラ画
フィレンツェ ウフィッツ美術館蔵
イタリア・ルネッサンス初期の巨匠。
かのボッティチェリの先生でもある
フィリッポ・リッピの「聖母子と二天使」。
ぱっと目に入るのは、
吸い込まれるような美女と子供が2人。
マリア様ってば、まーきれい!と、
ずーっと疑問も持たなかったのですが、
ある日、タイトルの“二天使"に目がいき
「あれ???」
聖母子ということは、聖母マリアにキリスト。
1、2、3。。。。
数が合わないとハタと気がつきました。
どこだ、どこだと探したら、
イエス様の手の後ろに
天使を発見!
ちょっと、四天王に踏まれている天邪鬼に
似ていなくもない感じ。
こうなると、この不敵な鼻と口もと、
少しだけ見える奥の天使がどうにも
気になって仕方がなくなり、想像力を
掻き立てます。
実は、この作品は、私にとっては
大切な思い出の一枚です。
ある日、お絵かき教室で模写をし、
完全にノックアウトをくらった小学生は、
舌を噛みながら名前を憶え、
しばらく横顔ばかり描いていました。
ところが天使の記憶はというと、
全くない。
どこにもない。
全然ない。
写真はきっと部分だったに違いないと、
妙にこだわってしまうのも、
思い入れの強さの仕業かも。
さて、
作者のフィリッポ・リッピは、修道院の院長様。
幼くして孤児になり、修道院で育てられ、
修道士になった人ですが、もともと
この業界とは合わない典型的な人物でした。
対するモデルの女性はその女子修道院の修道女。
あろうことかこの二人は駆け落ちし、子供まで
もうけてしまったのだから大騒ぎ。
それでも芸術をこよなく愛する、
当時のメヂィチ家のご当主のコジモが、
ローマ法王と話をつけ、還俗させて
守り切ったのですからアッパレですね。
イエスのモデルは息子の、フィリピーノ・リッピと
いわれています。
騒ぎが収まった翌年、この作品は描かれて
います。
そんな物語を思い描いて、
もう一度みてみたら、
二人の天使はなんとも不敵。