画家あれこれ2
藤田嗣治 レオナール・フジタ (1886-1968)
フジタと言えば乳白色。
代名詞になっている、パリで生まれたトロトロとして冷やかで一度見たら忘れられない白!
1913年にパリに渡り、西洋画と日本画が見事に融合した独自の画風から醸し出される世界観は、見るものを圧倒し続けています。
ところが、「秋田の行事」は全く作風が違い、“エッこれがフジタ?!”と思ってしまう作品です。
中南米旅行後の1930年代以降の作品群は、それまでの優美で繊細な絵画から一転、写実的で土着的、好みがパックリ別れるところです。
第一印象は、とにかく大きい。
縦3.56m×20.5m。3700号!なんと約64畳分。
前に立てば視界には作品のみがうつる大絵巻物です。
竿灯や秋田犬、カマクラなど
“THE秋田”が描かれています。
とりわけ、空の青が、
まさに冬の秋田の青。
この青には思わず唸ってしまいました。
雪の白。
この白も日本の白。秋田の白。
空気に温度、ザワザワとした人々の声、
足音、笛太鼓と祭の音が聞こえてきます。
実物を前に、体験の凄さ実感です。
「秋田の行事」は秋田の資産家平野政吉がフジタに発注した作品。
平野家の米蔵を改装して15日間174時間で一気に描きあげた、大きさスピードともに天下一品の名品です。
圧巻の一言。
大きすぎて戦後、搬出の際、蔵の一部を壊したという逸話まで残っています。
今は蔵跡は駐車場となり、竿灯の季節はみんなの練習場所になっているそうです。
去年、今年と秋田に個展でお邪魔した時も、いの一番で美術館に向かいましたが、今年は作品の中央やや左上に描かれている、甕がある屋根をじっくり見てきました。
現在文化財(旧金子家住宅)になっているそのお屋敷は、個展会場のギャラリー杉のすぐ前にあり、昨年、展覧会にいらしてくださったご当主の金子様が、お屋敷内を案内くださったこともあり、特にその部分に思い入れが強かったのです。
東京はありがたい事に素晴らしい展覧会がいくつも開催され、世界各国の名品に出会えるチャンスがありますが、やはりそこでしか観ることのできない作品は格別ですね。改めて出向く事の大切さを知った気がしました。
蛇足ながら、こちらはヴァチカン美術館で出会ったフジタ作品です。
レオナール・フジタは偉大なり!!