画家あれこれ10 2014.11.30 NEW
オディロン・ルドン(1840-1916)
~日本風の花瓶~
箱根のポーラ美術館。
戦後最大のコレクター。
化粧品で有名なポーラの2代目故鈴木常司氏が、
40数年に渡って、古今東西の美術品を体系的に
収集した作品が展示されています。
その数なんと9500点!
企業トップとして、日夜過ごしていた鈴木氏を
魅了した作品達に出会える場所が、
箱根のポーラ美術館です。
あまたある名品の中で、大切に飾られていた
<ルドンの花>。
この絵の近くに、小さなキャプションがありました。
うる憶えですが、大筋は
「鈴木氏は重大な決断をしなければならない時、
このルドンの絵を前にじっと座っていた。」と。
な ぜ ?
それ以来、男の人が絵の前にじっと座り、絵を
見つめているイメージが脳裏から離れなくなりました。
ルドンは19C末から20C初めのフランスで生まれた、
象徴主義の作家です。
20代は白黒モノトーンの死の影を匂わせる作品を
描いていましたが、年を重ね50代になる頃には、
パステルを中心とした、色鮮やかな魂の深遠を描い
た作品を多く残しました。
かなり不気味。。。。
『泣く蜘蛛』1881年
木炭
個人蔵 オランダ
こちらは鮮やかなパステル画
『ペガサス・岩上の馬』1907-10年
ひろしま美術館
カラフルになったけど、やっぱり不気味。。。
『キュクロブス』1914年
クレラー・ミュラー美術館蔵(オランダ)
目に見えない世界をどう描くか。
逆に言えば、何を目に見えない世界とするか。
象徴主義の切り口は、目に見えない世界、
深層心理や無意識、神秘・神・魂といった領域を、
何かイメージできるシンボルで表現することで、
その世界と鑑賞者の橋渡しをしようとします。
大きな画面いっぱいに広がった色。
摩訶不思議な花。
日本風な若武者の花瓶。
幻想的で深くのびやかな、筆づかい。
吸い込まれるような動き。
深淵なる輝き。
名品です。
しかし、それだけで何時間も座り続けるだろうか?
なぜ、この絵なのか?
他の絵とどこが違うのか?
幾日も楔のようにひっかかり続けていました。
そんなある日、
「あっ!」と
雷に打たれたように閃きました。
絵は、全ての瞬間が画家の決断の連続です。
そして、その決断の時間が1枚の絵に詰まっています。
自分が最高に素晴らしいと思った絵、
つまり、完璧な決断を重ねた結果が
目の前にあるルドンの花だったわけです。
最高の決断の結果と、
これから自分が下す決断とを完璧に一致させる。
自分の決断が正しいという確信と、自信を得るための
作業だったのではないか。
震えがきました。
自分の判断一つが、従業員やその家族、関連する企業、
何万人もの人生を左右する企業TOPの孤独な戦い。
想像を絶する世界を支えていたのが、
この作品だったのではないか?
あらためて観ると、今までと違う世界が見えてきました。
さて、絵との付き合い方の一つに、
調子のいい時、もしくは調子の悪い時に、
いちばんピッタリとくる作品を探しておくことを
オススメします~。
理由は、自身のバロメータになるから!!
何か上手くいかない時は、
調子の良い時に好きだった作品を観て、
その感覚を思い出し、その流れにのっかる。
逆に、調子が悪い時に好きだった絵が気になり
始めたら、<危ない>のサイン。
これが結構当たるんです。
最近、視覚と脳の関連にハマッていて、
調べるうちに知ったことに、
<私達が得る情報の80%以上が視覚情報から>
があります。
受け売りですが、まず、目に入ったものは、
頭の一番後ろの第一視覚野に入ります。
その後の処理の仕方は千差万別。
なんと脳は、一番高次の視覚機能がある、
前頭葉が描いたイメージを何が何でも達成
しようとするんだそうです。
そこで、いい事をイメージしたほうがいい。
プラスに物事を考えたほうがいい。
ビィジョンをありありと描いたらいい。等
「素敵な事がやってくる秘訣」の理由は
実はここからきているようです。
ならば使わない手はない!!という訳です。
ルドンはどこに行ったって?!
こういう風に、
一見関係なさそうなところまで連れて
行ってくれるのが、アートの面白さ。
ルドンの凄さです~
ぜひお気に入りの絵を見つけましょう!!